カサンドラ症候群の傾向と対策

カサンドラ症候群とは、アスペルガーの夫と感情的交流が持てず、妻がうつ病に似た症状を呈する事。

妻に限らず、アスペルガー男性の職場の仲間なども含める場合もあるようだが、この記事では夫婦のカサンドラ症候群に限定して取り上げていく。

カサンドラ症候群の分類

  • 愛着回避的なアスペルガーの夫に孤独を感じる愛着不安の強い妻
  • 尊大型のアスペルガーの夫からの、理不尽な扱いに苦しめられる妻

愛着回避的なアスペルガーの夫には、孤立型のアスペルガーが多いだろう、と自分は思う。

愛着回避的なアスペルガーの夫の場合、悪意はないだろうと自分は思う。

尊大型のアスペルガーの夫の場合、理不尽だと自覚しながら理不尽な扱いをする、確信犯的な部分があるだろう、と自分は思う。

予防対策

  • 見合い結婚
  • 同好の士

見合い結婚の場合、夫がアスペルガーを持っていても妻はカサンドラ症候群にはなりにくい傾向がある

見合い結婚は経済的釣り合いなどを重視する傾向があるため、最初から精神的交流をあまり期待していないためだ。

そして、学者同士の結婚など、同じ興味がある物を共有できる「同好の士」といったタイプの組合せも、カサンドラ症候群にはなりにくいようだ。

アスペルガーの夫の拘りの対象に、妻も興味を持っていれば、共通の話題となり、夫婦間の交流を維持しやすいのだろう

根本的解決策は「離婚」

カサンドラ症候群の根本的な解決策は、離婚。

だが、日本の労働制度では、結婚や出産で退職した女性の再就職が難しい

離婚した女性は経済的に困窮する傾向があり、現実的には難しい

カサンドラ症候群の解決には、アスペルガーを批判するよりも、労働制度の改革の方が良いと自分は思う

ただし、一つ注意点がある。

将来、労働政策が変われば、これから先、カサンドラ症候群になった女性達は、救われるかもしれない。

だが、現時点のカサンドラ症候群の女性の中には、キャリアのブランクが既に長くなってしまい、再就職できなくなっている人もいるだろう。

その場合、現時点で持っているカードを組み合わせて、生き延びていくしかないだろう。

ちなみに、離婚以外には、夫の単身赴任などでの別居も離婚と同じ効果があるだろうと自分は思う。

あと、アスペルガーのパートナーと結婚前である女性の場合、妊娠・出産後に備えて再就職しやすい資格を取得しておく、という対策も可能だろう。

現在は対症療法しかできない

現在のカサンドラ症候群への治療は、精神科医やカウンセラーが、カサンドラの女性達のアスペルガーの夫への愚痴を聞いてあげ、ガス抜きをし、必要なら投薬もする、という対症療法だ。

経済的自立の手伝いは、医師の領分を超えるため、抜本的な対策ができないのだ。

ソーシャルスキルトレーニング

カサンドラ女性の夫のアスペルガー男性は、結婚するまでのステップでは、恋愛ノウハウ本などで独学し、マニュアル通りに振る舞えるため、魅力的に見える傾向があるそうだ。

ただ、恋愛ノウハウ本は、結婚した後のノウハウのジャンルではほとんどないため、アスペルガー男性は妻をカサンドラにしてしまうような振る舞いをしてしまうとか。

発達障害の治療には、ソーシャルスキルトレーニング(SST)という授業形式で人付き合いを学ぶプログラムがある。

現在のSSTは、職場での人付き合いをテーマにしたものや、青年期の発達障害者を対象にしたものであり、結婚生活をテーマにしたものは、自分の知る限りないようだ。

結婚後の振る舞い方をテーマにしたSSTのプログラムを発達障害の専門病院が開発すれば、カサンドラ症候群をある程度改善できるかもしれない。

現時点で結婚生活での振る舞い方をアスペルガー男性が学べそうな教材は、自分の知る限り、以下の二つの物がある。

マンガで分かる心療内科「モテるマンガ」シリーズ

「倦怠期を防ぐ方法」

・年の話題は否定するかスルーする

・美醜について悪く言わない

・他の異性を褒めない

・半年に一度は旅行に行く

秋葉原心療内科/モテるマンガ第4回「女は何歳まで女?~倦怠期を防ぐ方法」 by ゆうメンタルクリニック

精神科医のゆうきゆう先生原作のマンガで分かる心療内科「モテるマンガ」シリーズ。

若年男性向けの、下ネタを交えたギャグ漫画であるため、そういった類が苦手な女性は読むのは避けた方が良いと自分は思う。

美人の正体」越智圭太

・カップルは、容姿に劣る方が容姿で勝る方に尽くす行動をする傾向がある

・容姿に差があっても、同居を始めると離婚率は容姿に差がないグループと変わらなくなる

「美人の正体」越智圭太

法政大学文学部心理学科教授の著作。

統計に基づいた恋愛心理学の本。

地域にもよるが、図書館にもあると思う。

夫への「オキシトシン」の処方

現在、アスペルガー症候群の治療薬として、「オキシトシン」という脳内ホルモンが研究されている。

治験結果を見て、自分は以下のように分析した。

脳内ホルモンであるオキシトシンは、アスペルガーの性格的な特性は解決できるが、能力の発達の偏りまでは解決できない様子だ。

参考「世界初 自閉スペクトラム症へのオキシトシン経鼻スプレーの治療効果を検証しました

カサンドラ症候群は、夫に気持ちが通じない事でうつ病に似た症状を呈するという仕組み。

そのため、オキシトシン実用化後、オキシトシンの服用で夫の性格的な特性が変わるだけでも、カサンドラ女性の症状はある程度軽減するだろうと自分は思う。

オキシトシンの副作用

オキシトシンは、医学的な副作用は少ないようだが、職業適性の点での副作用が出る可能性が高い、と自分は思う。

長所と短所は表裏一体であり、オキシトシンでアスペルガーの特性が弱まると、社会的に成功しているアスペルガーの場合は、職業能力が低下する可能性があると自分は思う。

例えば、社会的に成功しているアスペルガー尊大型には、経営者も多いようだ。

アスペルガーの「他人の気持ちが分からない」という特性は、リストラなど非情な決断が必要な経営者としての適性に繋がっていると思われる。

オキシトシンによって、「他人の気持ちに興味を持てる」ようになると、経営者としての能力が低下する可能性がある。

他には、アスペルガーは研究者やプログラマーに向く傾向があるが、それは興味範囲の限定性や繰り返しの特性などの特性も影響していると思われる。

オキシトシンでそれらの特性が目立たなくなると、研究者やプログラマーとしての適性が落ちる可能性が高い。

もしも、上記の理由でアスペルガーの夫がオキシトシン服用を拒否した場合、カサンドラ女性がどれだけ怒っても、法律的には強制する事ができない。

カサンドラの妻は、アスペルガーの夫に経済的に依存している事が多いと思われるため、服用を強制する事は経済的な力関係の点でも難しいだろう。

特に、尊大型の夫の場合は、とても口が達者な傾向にあるため、説得は難しいだろう。

あと、アスペルガーを持つ夫が社会的に適応できている場合、

「自分が困っていないのに薬を飲まされるのは嫌だ」

という理由でオキシトシンの服用を拒否するケースも多く出るだろうと自分は思う。

その他の対策

個人的意見だが、ペットの飼育も一種のアニマルセラピーとして多少の効果はあるかもしれないと自分は思う。

夫に感情的交流が期待できないため、ペットに心の癒しを求める、という意味合いで。

ただし、アスペルガーの夫に感覚過敏があり、動物の匂いや鳴き声が苦手な場合、トラブルの火種になりかねないため、飼育は辞めておいた方が良いと自分は思う。

カサンドラ症候群の二次被害

カサンドラ症候群の女性達は、手強いアスペルガー尊大型の夫ではなく、周囲にいる弱いアスペルガー受動型に八つ当たりしていると自分は思う。

カサンドラを診る精神科医には、手強い尊大型の代わりに、弱い受動型を批判して、人気取りをしているタイプがいると自分は思う。

その場合、八つ当たりされたアスペルガー受動型が二次障害として精神疾患になるリスクが高く、カサンドラ症候群の二次被害になる。

対策として、アスペルガー受動型をスケープゴートにして人気取りをする精神科医は、厳しく規制・処罰した方が良いと自分は思う。

カサンドラ女性によるアスペルガー受動型への八つ当たりも、医療職や周囲の家族が止めた方が良いと自分は思う。

カサンドラ女性とADHD

アスペルガー症候群の男性は、曖昧な言い方が分からないという特性から、はっきりと物を言うADHDの女性と結婚しやすい傾向がある。

そのため、カサンドラ女性にはADHDを持つ人が多いと自分は思う。

アスペルガー受動型は、周囲のADHDやアスペルガー尊大型に都合良く利用される傾向がある。

ADHDやアスペルガー尊大型は自己主張が激しく、ASD受動型はおとなしいため、見て見ぬフリをされる傾向もある。

障害者間のいじめは、健常者からのより激しくなる傾向もある。

カサンドラ女性によるアスペルガー受動型への八つ当たりは、上記のような背景がある事を踏まえて、カサンドラ女性の言い分を鵜呑みにせずに、しっかりと止める事が必要だろう。

併発する毒親問題

精神科医が 書いた「毒親の正体」によると、毒親に一番多いには、アスペルガー症候群やADHDなどの発達障害を持つ親だそうだ。

妻がカサンドラ症候群を発症するほど、夫のアスペルガーの特性が強い場合、子供に対しては、「毒親」という形で夫のアスペルガーの特性が悪影響を及ぼしている可能性が高い。

あと、発達障害は遺伝するため、親子共に発達障害を持っているケースも多い。

子供も発達障害を持っている場合、前述の「カサンドラ女性によるアスペルガー受動型への八つ当たり」は、カサンドラの母からアスペルガー受動型の子供へ行われている事もある。

他には、カサンドラ症候群の母とアスペルガー尊大型の父が、子供の前で怒鳴り合いの激しい喧嘩をしているなどのパターンもあると思う。

子供の前で親が夫婦喧嘩をする事は、「マルトリートメント」と呼ばれる心理的虐待であり、子供の脳の発達に悪影響を及ぼす。

夫婦喧嘩は子供がいない場所でした方が良いだろう。

カサンドラ女性はADHDを持つ場合が多いため、ADHDの多動性衝動性から、思った事をすぐに言ってしまい、暴言で子供を傷つけている場合もある。

精神科医やカウンセラーは、カサンドラ症候群の診察時、毒親問題も併発していないか、併せて確かめる事が必要だと自分は思う。

カサンドラ症候群と離婚事由

現在はカサンドラ症候群を直接、離婚事由とするのは難しいようだ。

「法律で認められている5つの離婚事由」

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 強度の精神病
  • 婚姻を継続しがたい重大な理由

参考記事:「裁判で離婚するときに必要な「法定離婚事由」…どんな場合に認められる?

この内、当てはまりそうなのは、「強度の精神病」だが、統合失調症など本当に重度の場合に限られる。

統合失調症は、幻覚や幻聴が見え、神がかり状態にもなったりするレベルの精神疾患だ。

カサンドラ症候群の妻の、夫自身は健康な状態が大半だと思われるため、当てはまらないだろう。

離婚するとしても、多くの場合、モラルハラスメントなどを「婚姻を継続しがたい重大な理由」として訴えていく事になるだろう。

ただし、夫が、妻のカサンドラ症候群改善のための協力を拒んだ場合、前提条件によるが「悪意の遺棄」として離婚事由として認められる可能性がある。

例えば、カサンドラ改善のための配偶者向けSSTの実用化後には、それへの参加拒否などは、「悪意の遺棄」として認められる可能性が高い。

認められない場合としては、オキシトシン実用化後のオキシトシン服用の拒否は、薬剤の服用を強制できないという理由から「悪意の遺棄」にはなりにくいだろう。

「発達障害者への差別」と言われないための工夫

なお、裁判では、

  • 離婚の「原因」は「発達障害を背景としたモラハラ」
  • モラハラは、アスペルガー症候群以外でも起き得るが、今回のケースはアスペルガー症候群が「背景」にあった
  • 夫のアスペルガーを背景としたモラハラでうつ病に似た状態になった「現象全体」をカサンドラ症候群と呼んでいる

という論理を使った方が良いと思う。

カサンドラ症候群を理由に夫を批判する事は、アスペルガー症候群への「差別」と捉えられる側面もあるからだ。

裁判官も、発達障害者への差別と捉えられるような判決は出しにくいはずだ。

離婚や損害賠償請求、という「成果」を勝ち取りたいならば、「人」を批判するのではなく「罪」を批判した方が良い。

「罪を憎んで人を憎まず」というスタンスは、被害者のカサンドラ女性が「発達障害者への差別」をしていると見られないための工夫として使えると自分は思う。

アスペルガー積極奇異型である筆者は、発達障害の専門病院でアスペルガー尊大型と見られる患者からモラハラを受けて、激しい怒りと嫌悪感を感じた事がある。

カサンドラ症候群の女性がアスペルガーの夫を嫌う気持ちも、全部ではないにしても、少なくとも一部は理解できる。

ただ、怒りのままに相手のアスペルガーを指して批判すると、「発達障害者への差別」と言われてカサンドラ女性の方の損になってしまう可能性が高いだろう。

ここは、ぐっと怒りをこらえて、「戦略」と思って、「罪を憎んで人を憎まず」というスタンスを取る事をお勧めする。

アスペルガー尊大型と自己愛性パーソナリティー障害

アスペルガー症候群には、いくつかの下位分類があり、その中に尊大型と呼ばれるタイプがいる。

尊大型は、とても口が達者で周囲を言い負かしたり、名前の通り、尊大な態度を取る事が多いため、アスペルガーの下位分類の中では一番嫌われやすいタイプだ。

そして、カサンドラ女性の夫には、アスペルガー尊大型が多いと思われる。

そして、これは、本の知識を複数組み合わせた上での個人的な仮説だが、アスペルガー尊大型は、自己愛性パーソナリティー障害を併発したタイプのアスペルガーだと自分は思う。

根拠
  • 発達障害はパーソナリティー障害が併発しやすい事
  • アスペルガーの下位分類は成長と共に変化し、後天的要素と見られる事

傍証として、アスペルガー受動型は、依存性パーソナリティー障害を併発している可能性が高いと自分は思う。

アスペルガー症候群は先天性の障害のため、後天的に治療する事はできない。

だが、後天性の自己愛性パーソナリティ障害の場合は、パーソナリティー障害として技術的には治療が可能なはずだ。

夫が尊大型の場合、自己愛性パーソナリティ障害を治療させれば、妻のカサンドラ症候群の症状の改善が見込まれる可能性があると自分は思う。

「都合の良い人」と「適切な振る舞い」の違い

カサンドラ女性の妻を持つアスペルガーの「夫向け」のアドバイスとしては、この章を設けた。

たぶん、カサンドラ女性が読むと腹が立つと思うので、カサンドラ女性の場合は、この章を読み飛ばす事をお勧めする。

アスペルガー症候群への治療の目的は、「都合の良い人」になる事ではなく、「適切な振る舞いができるようになる」事だ。

「適切な振る舞いができる人」は「都合の良い人」とイコールではない。

ADHDを持つ事が多いカサンドラ女性は、多動性衝動性のせいなのか、アスペルガーの夫に対し、「都合の良い人」になる事を求める傾向がある。

カサンドラ女性が求める「都合の良い人」になろうとすると、「妻に一方的に都合が良い不公平な関係」になる可能性が高いだろう。

アスペルガーを持つ夫は、カサンドラ女性の要求を、全否定も丸呑みもせずに、公平だと思われる要求のみを受け入れる事を心がけると良いと自分は思う。

あと、「発達障害者がいつも間違う訳ではなく、健常者も間違う事がある」という考え方を覚えておく事もお勧めする。

女性の社会進出とカサンドラ症候群

カサンドラ症候群は、アスペルガーを持つ人と感情的交流ができず、パートナーがうつ病に似た症状を呈する事を指す。

現在、カサンドラ症候群は、アスペルガーの夫とカサンドラの妻といったパターンで、男女逆は聞いた事がない。

現在の日本では、労働制度上、妊娠・出産後の女性が再就職しにくく、男性に経済的に依存する女性が多いためだろう。

しかし、将来、女性の社会進出が進み、男性の「専業主夫」が増えた場合も同様に、アスペルガーのキャリア女性に経済的に依存する男性が、カサンドラ症候群になる可能性がある。

例えば、女性の社会進出が進んだ外国で、女性から男性へのセクハラ問題も出てきている。

カサンドラ症候群も、社会制度の変化に伴い、問題の形が変化していくと自分は思う。

実際には、「専業主夫」は、しばらくの間、周囲の反対や差別などが多いと思われ、それらのトラブルの方に手一杯で顕在化しにくいだろう。

男女逆のカサンドラ症候群が顕在化するのは「専業主夫」への周囲への反対や差別が収まる数十年後の遠い未来である可能性が高いと自分は思う。

あと、将来、同性婚が法律で認められ、同性同士の結婚が増えた場合で、アスペルガーを持つ同性パートナーに経済的に依存する人の場合、カサンドラ症候群になる可能性がある。

同性カップルも同様に、しばらくの間は差別や周囲の反対などが多いと思われ、それらのトラブルに手一杯でカサンドラの問題が顕在化しないと自分は思う。

対策は、女性の社会進出が進んでいたり、同性婚が認められている外国の研究を先例として調査する事である程度備える事ができると自分は思う。

免責条項
・当ブログは、管理人が書籍を中心に得た情報を分析してまとめていますが、あくまで管理人個人の主観による物です。
・治療や就労、及びそれらに付随する一切の事柄の判断は読者の責任でお願いします。
・掲載情報にはできる限りの正確さを心がけていますが、管理人は医療関係者ではないため、万一当ブログを利用する事で損害が発生しても、責任は負いかねます。
・上記の事柄をあらかじめ承知しておいてもらえるようお願いします。

ASDとオキシトシン

オキシトシンとは?

オキシトシンは、自閉症スペクトラム向けに研究中の薬剤だ。

オキシトシンは脳内ホルモンで、愛情ホルモンと呼ばれる一方、集団外部の人へ冷たくなるという作用もある。

ASDはオキシトシンの血中濃度が低く、それがASDの特性の原因ではないかと見られている。

オキシトシンは、ASD向けに注目される前から不妊治療などに使われてきた。

ASDの特性と原因

オキシトシンの治験結果、「世界初 自閉スペクトラム症へのオキシトシン経鼻スプレーの治療効果を検証しました 」によると、

「その結果、面談場面での振る舞いから専門家が評価した対人コミュニケーションの障害に対するオキシトシンの効果はプラセボ効果(※4)を上回らなかった」

「また、もう一つの主な症状である常同行動と限定的興味や、視線の計測で評価した対人コミュニケーションの障害の客観的な指標については、オキシトシンの投与で改善していました」

との結果が報告されている。

つまり、ASDの特性の原因は、

  • オキシトシンの血中濃度の低さ:社会性の障害、常同性、興味範囲の限定性
  • 発達の偏り:コミュニケーションの障害

なのだと思う。

ちなみに、「視線の計測で評価した対人コミュニケーションの障害の客観的な指標」は、他者への興味を示す物であり、社会性の障害の範囲内だと自分は思う。

オキシトシンは、ASDの性格的な特性を消すが、能力の偏りには効果がないと思う。

ASDの男女比とオキシトシン

ASDは男性が多く、女性が少ない傾向がある。

それには、文化的な要素が原因で女性のASDが目立たないだけという説があった。

だが、オキシトシンは愛情ホルモンと呼ばれ、不妊治療にも使われる。

女性のASDが少ないのは、男女のオキシトシン分泌量に差があって、それで女性のASDの性格的特性が出にくくなっている、という可能性がある。

オキシトシンの想定用途

  1. 反社会的な物への拘りが原因のASD犯罪者
  2. 反社会的ではない拘りが原因のASD犯罪者
  3. 拘りによる適応障害
  4. 発達障害を背景とした毒親
  5. カサンドラ症候群
  6. 集団いじめの予防

上記四つの内、本人が拒否しても、強制的にオキシトシンを投与しても良いのは、1の「反社会的な物への拘りが原因のASD犯罪者」だけである。

残りのタイプには、オキシトシンの前に環境調整やSSTで治療を試みた上で解決できない場合にだけ、オキシトシン投与を検討すべきである。

また、上記四つのタイプ以外に、ASDの適応障害パターンとしては、

  • 単独犯いじめ被害による適応障害
  • 周囲の迫害行為が原因の問題行動

などが想定される。

だが、上記のタイプは、オキシトシンの血中濃度の低さとは、直接的な因果関係がないため、投与しても無駄である。

以下で、ASDの適応障害パターンについて解説していく

反社会的な物への拘りが原因のASD犯罪者

「ケーキの切れない非行少年たち」には、「人を殺す事」に拘りを持ってしまったASDの非行少年が挙げられている。

この場合、オキシトシンを投与する事で、「人を殺す事」への拘りを消す事が可能だと自分は思う。

そして、オキシトシンの実用化まで、反社会的な拘りが原因のASD犯罪者は、刑務所・閉鎖病棟から出してはいけないと自分は思う。

筆者もASD当事者だから分かるのだが、ASDの拘りはかなり強力であり、「説得」で変える事は不可能だからだ。

反社会的ではない拘りが原因のASD犯罪者

ダリウス・マッカラムは、電車やバスに拘りを持つASDで、ただ「電車やバスの運転を楽しみたい」というだけの動機で勝手に電車やバスを乗り回し、30回以上逮捕されている。

そして、ダリウスさんは、テストをしてみた所、現役の地下鉄運転手より豊富な知識を持っていたそうだ。

子供の頃から地下鉄に入り浸り、地下鉄運転手に教わっていたためらしい。

そのため、彼を地下鉄運転手として雇ってあげてはどうか、という提案もされたらしいが、彼に前科がある事で却下されたそうだ。

ちなみに、最初に彼が逮捕されたのは、彼が少年の時、地下鉄運転手が彼に運転させたかららしい。

そういった背景からダリウスさんは30回以上も逮捕され、人生の多くの時間を刑務所で浪費してしまっている。

彼の電車やバスへの拘りそのものは、反社会的ではないが、少年の頃についた前科のせいで地下鉄運転手へ就職できず、犯罪に繋がってしまっている。

まとめると、反社会的ではない拘りが原因のASD犯罪者は、まず環境調整を試みて、環境調整で解決できない場合、オキシトシンの投与を検討する、といった対処が望ましいと自分は思う。

拘りによる適応障害

プラモデルに拘りを持ってしまったASDの青年が就職活動をしなくなり、専門医が説得に当たったが、就職再開には7年を要した、という事例がある。

その場合、まず拘りを活かして経済自立できないかという方向性で環境調整を試み、それでも無理な場合、オキシトシンの投与を検討すべきだ。

発達障害を背景とした毒親

精神科医の水島広子医師は、著書「毒親の正体」で「毒親の多くには精神疾患があり、最も多いのは発達障害」と述べている。

そうした「発達障害を背景とした毒親」は、ADHDとASDの二タイプがある。

その内、「ASDを背景とした毒親」には、オキシトシンが有効である可能性が高い。

ちなみに、ADHD向けには、コンサータやストラテラなどの薬剤が既に開発されている。

「ADHDを背景とした毒親」には、コンサータやストラテラなどの薬剤が有効であると思う。

ただし、

  1. 「発達障害を背景とした毒親」向けのソーシャルスキルトレーニング(授業形式で人付き合いノウハウを教える治療)を受けさせる
  2. それでも解決しない場合に、薬物投与を検討

といったステップで治療を進めるべきである。

ただし、2019/12/30現在は、「発達障害を背景とした毒親」向けのソーシャルスキルトレーニングは、存在しない。

カサンドラ症候群

カサンドラ症候群は、ASDの夫を持つ妻が、うつ病に似た症状を呈する事。

カサンドラ症候群の場合、ASDの夫へのオキシトシン投与も治療法の一つとして有効だと思われる。

ただし、

  1. 女性の側が経済自立して離婚、という環境調整を試みる
  2. それができない場合に、夫へのオキシトシンの投与を検討

といったステップで治療を進めるべきである。

集団いじめの予防

東大卒の脳科学者の中野信子教授は、著書「ヒトはいじめをやめられない」で、

「いじめは、人間の本能に組み込まれている「集団の裏切り者への制裁システム」の暴走」

だと述べている。

ここからは個人的意見だが、ASDは社会性の障害で、集団の多数派に逆らってしまうため、「集団の裏切り者への制裁システム」の暴走に遭いやすいのだと思う。

そのため、オキシトシンで社会性の障害を含めた性格的な特性を消せば、集団いじめ被害には遭いにくくなると思う。

だが、ASDの社会性の障害には、集団の暴走を防ぐ役割がある。

ASDにオキシトシンを投与すれば、集団いじめの予防にはなるかもしれないが、集団の暴走が起きやすくなるという副作用が出るだろう。

故に、ASDへの集団いじめには、

  • 学校においては、ホームスクールや教室への監視カメラ設置
  • 職場においては、ASDに向く働き方を試す

といった対策をして、それでもダメな場合に、オキシトシンを検討すべきである。

単独犯いじめの予防

いじめには、

  • 集団いじめ
  • 単独犯いじめ

の二種類がある。

前述した通り、オキシトシンは、集団いじめの予防には効果がある。

だが、単独犯いじめの予防には効果がない

単独犯いじめの場合は、ASDのコミュニケーションの障害が、「付け込みやすい隙」として狙われているためだ。

例えば、心理的いじめの被害に遭うと、周囲に助けを求めても、コミュニケーションの障害が重いASDは、曖昧な心理的いじめの手口を上手く説明できず、逆にASDの方がおかしい人だと思われる事がある。

ASDのコミュニケーションの障害は、発達の偏りによる物であり、オキシトシンの血中濃度の低さが原因ではない。

単独犯いじめの予防には、ソーシャルスキルトレーニング(授業形式で人付き合いノウハウを教える治療)など、「知識」が効くと自分は思う。

周囲の迫害行為が原因の問題行動

「ケーキを分けられない非行少年たち」には、「軽度の知的障害や発達障害を持つ少年たちが、学校で壮絶ないじめに遭い、そのストレスを背景として幼女への猥褻行為に及ぶなどの問題の構造がある」と述べられてる。

「発達障害と少年犯罪」にも、「発達障害と犯罪には直接的因果関係はないが、迫害体験を第三因子とした間接的相関関係はある」といった内容が書かれているようだ。

また、「カウンセラーが語るモラルハラスメント」には、「モラルハラスメントの破裂行動」という概念が紹介されている。

心理的暴力の被害者が我慢できずに、物理的暴力で反撃してしまう、という現象の事だ。

ここからは自分の考えだが、ASDはコミュニケーションの障害で、心理的暴力に弱く、一方的に嬲られる傾向がある。

そのため、「モラルハラスメントの破裂行動」で一方的に加害者にされてしまいがちだと思う。

このタイプは、集団いじめ被害と単独犯いじめ被害の両方が混ざっていると見られる。

集団いじめ被害が原因の場合は、オキシトシンで集団いじめ被害を予防する事ができるだろう。

だが、単独犯いじめ被害が原因の場合は、オキシトシンは効果がないだろう。

どちらなのか見極める事が必要だ。

ニューロダイバーシティ

ニューロダイバーシティは、発達障害を、障害ではなく「人類の生息環境に対する適応」と考える。

アスペルガーは、100人に一人。

他の遺伝子疾患は一万人に一人などが普通であり、自閉症スペクトラムは極端に多い。

それは、アスペルガーに存在意義があり、遺伝子が淘汰されなかったからだ、とニューロダイバーシティーでは考える。

そして、ASDの存在メリットには以下の物がある。

  • ASDの社会性の障害は集団の暴走を防ぐ役割がある
  • 人より物に興味があるASDは、集団外部の脅威を見張る役割がある

オキシトシンとニューロダイバーシティは、正反対の考え方だ。

  • オキシトシンは、ASDの性格的特性を消してしまう治療法
  • ニューロダイバーシティは、ASDの性格的特性を消さず、環境調整やバリアフリーなどで共存しようという考え方

理論的には、オキシトシンは、「反社会的拘りを持つASD犯罪者」のみに限定し、他のASDは、

  • 環境調整
  • SST
  • 発達障害者へのバリアフリーな社会制度

などで解決を試みるべきだ。

だが、実際には、オキシトシンが「反社会的拘りを持つASD犯罪者」以外にも、多く使われてしまうと推測している。

理由は複数ある。

  • 精神科特例の名残で、精神科医の配置数が「1:60」と少なく、診察時間が短いため、時間がかかる環境調整よりも、薬物療法の方が好まれるため。
  • 科学技術を変化させる事より、社会制度を変化させる事の方が難しいため。
  • 発達障害の研究者には、理系の医師が多く、環境調整や発達障害者へのバリアフリーな社会制度のなど文系的な研究が苦手な事。

最初の内は、オキシトシンが多く使われてしまうのは仕方ないが、オキシトシンのASDへの投与にリスクがある事を認識して、対策を打ち、徐々にオキシトシンの投与率を減らしていくべきだ。

対策とは、

  • 精神科医の配置数を「1:15」に
  • 発達障害者へのバリアフリーな社会制度や環境調整を研究する文系の学部・学科を設立する事

などだ。

オキシトシンの投与の原則

  • オキシトシン投与の前に環境調整やSSTで解決を試みる事
  • 「反社会的拘りを持つASD犯罪者」以外のASDには、オキシトシン投与を強制しない事
  • オキシトシンの投与の統計を取り、ASD全体の何割に投与したか、発表する事

ASD全体へのオキシトシン投与率の統計は、集団の暴走の起こりやすさを示す指標になると思う。

オキシトシンのインフォームドコンセント

オキシトシン実用化後は、ASDにオキシトシンを投与する前に、以下の事をインフォームドコンセントとして説明した方が良い

  • ASDにとって大事な拘りが消えてしまう事
  • 興味範囲の限定性や繰り返しの特性は、技術者などへの職業適性になる事

ASDの人にとって、自分の拘りは大切な物のため、自分の拘りを消されるのは抵抗があるだろう、と自分は思う。

少なくとも自分は抵抗を感じる。

オキシトシンが実用化された時には、インフォームドコンセントとして、拘りも消える事を説明した方が良いと思う。

本人が拒否しても、強制的にASDの拘りを消して良いのは、「反社会的な拘りを持つASD犯罪者」だけである。

オキシトシンの個人輸入はやめた方が良い

現在、外国でオキシトシンの点鼻薬が購入できるため、個人輸入をする事もできる。

だが、オキシトシンは、継続的に投与すると耐性ができて、効きにくくなってしまう。

そのため、現在、研究者らが、耐性がつきにくいよう、研究を進めている。

オキシトシンの服用は、耐性がつきにくいよう、工夫されたオキシトシンがリリースされるまで待った方が良いと自分は思う。

免責条項
・当ブログは、管理人が書籍を中心に得た情報を分析してまとめていますが、あくまで管理人個人の主観による物です。
・治療や就労、及びそれらに付随する一切の事柄の判断は読者の責任でお願いします。
・掲載情報にはできる限りの正確さを心がけていますが、管理人は医療関係者ではないため、万一当ブログを利用する事で損害が発生しても、責任は負いかねます。
・上記の事柄をあらかじめ承知しておいてもらえるようお願いします。